《4》セミプロな私


私には自閉症のBeautifulな息子がいるので自閉症児とのつき合い方はプロだ。

もちろん、その他の障害者(児)となると話は別なのだけれど、最近では

向井万起男さん(日本初の女性宇宙飛行士の亭主を自認)の言葉をお借りして

「結構イイ線いってるアマチュア」だと自負している。


子供が生まれるまではピチピチのタイトミニをはいて会社に通うOLだったので

2〜3歳の子供たちが社宅の駐車場で遊んでいると

「穴掘るなよ〜〜。雨が降って水がたまったらアタシのヒールが汚れるじゃんかぁ」

と、本気で嫌がっていた。

もちろん大人だから口に出して言ったりはしなかったけれど。(当たり前だ)

だから、20代後半まで障害児どころかバッチイ子供も苦手だった。


極小未熟児のこうくんが救急車で運ばれたのは、心身障害者センター内にある

コロニー中央病院のNICUで、1階の外来に健常な患者はいなかった。

3階のNICUに行くためには外来の前を通らなければならない。

私と主人は一度にこんなに大勢の障害者(児)を『見る』のは初めてだったので

最初の頃はただもう、周りの人と目が合わないように出来るだけ下を向いて

小走りにエレベーターに直行していた様に思う。

けれども2ヶ月もするとさすがに慣れてきて、体がねじれたようになって何とか

車椅子に座っているという感じの子が「ごんじじあ」と話しかけてきても

うろたえることなく「こんにちは」と返せるようになってくる。

でも、もちろんその頃はまだ「無理して」普通に振る舞うように心がけて

いい人ぶっていたにすぎない。


幸運にも日本にいながらそういった経験をしていたので、渡米後町中いたる所で

ごく普通に生活している障害者に会っても別にとまどったりはしなかった。

駐在員の奥さんの中には

「こっちって、妙に障害者多くない?どう接していいか困っちゃう。」

と言う人もいた。

正直な感想だろうと思う。


私が良く利用しているスーパーではレジのいくつかを障害者が担当している。

マヒした手でバーコードをスキャンしたりレジを打ったりするから、もちろん

とっても遅い。

その上、袋入れ係が知的障害のある若い子だったりするともう大変。

20分以上かかったりする。

最初のころは値段を打ち間違えないかとヒヤヒヤしたが、逆に3本セットのネギを

2本しか買ってないことを指摘されたりした。

ダウン症の女の子がISUのハンサムな学生アルバイトと楽しそうに

おしゃべりしながら働いているのを見ると、

やはり、この国にはかなわないと思ってしまう。

ちなみに時間のない人は別の列に行けばいいのだし、10こ以下の買い物の時は

専用の早いラインがあるので、決して不便ではない。


我が家の近所にあるマクドナルドのフロア係の人にも障害がある。

バボーはいつもクッキーをくれるその人がだ〜い好きだ。

ちなみに同級生のターピーの弟もそうらしい。


こうくんが週に2回通っているISU(イリノイ州立大学)のスピーチクリニックの1階は

重度の身体障害を持つ子供たちの幼稚園になっている。

そこの廊下はまるで車椅子の見本市のようで、1つとして同じものはない。

重度の身体障害者が10人移動するには、10種類の車椅子が必要になる事を

実感させてくれる。

大学の実験校だから、一人一人に合わせた道具を使って個別プログラムで

指導と訓練が行われているのだと思う。

バボーはスクールバスからカッコ良く宙に浮いて(?)ジーコジーコと降りてくる

彼らにちょっとあこがれている。

バスの電動昇降機に何とかして自分も乗ってみたいと思っている様だ。


彼らに『会う』ことが日常になっている私は、もはや「無理して」フツーに

振る舞っていた事など忘れかけている。

ましてや、コロニーの小児科外来の長椅子にうつむいて座り

「うちは違うのよ。ただの未熟児のフォローアップなんだから」

なんて思っていた事など雲の彼方に消え去っている。

今回、育児日記を久々に丁寧に読み返して思い出した。

自分の子供に障害があるからではない。

これは単なる「慣れ」だ。

誤解も「慣れ」て相手を「知る」ことにより解消される場合が多い。

「慣れ」た私は、やっぱり「結構イイ線いってるアマチュア」で

このままいけば、セミ・プロ位にはなれそうな気がしているんだけどな。




<追記>

障害者という言葉はすごく嫌いです。

でも、ハンディキャップも同じ意味だし、○○が不自由な方っていうのも

健常者の優越意識が見えて好きじゃないんです。

他の言葉が見つからなかったので仕方なく使いました。

不快な思いをされた方がいたらごめんなさい。

(2000.12.22)



<追記・2>

こうくんがレスパイトでお世話になっているリソースセンターからのレターの中に

ちょっといい文を発見。

For the people with special need

スペシャルニードっていう言い方って、とっても自分にぴったりくる。

以来、スペシャルニードを愛用。

もちろん、障害者というのが公式な単語だから、それはそれとして、

気持ちのいい言葉を使いたいですからね。

それにつけても、「自閉」って単語、なんとかなりませんかね〜。

(2001.1.15)