《2》But He is Beautifulって


HPのタイトル『But He is Beautiful』はそのままでも「だって、かわいいんだもん」

と言う感じで意味は通じるのだけれど、もちろん由来がある。


私は渡米して1年程たった頃から念願の歯列矯正を始めた。

抜歯してブレスを付けてしまえば、後は毎月一回10分程度のワイヤー締め

だけだと聞いていたので、こうくんがいても何とかなるだろうと考えていた。


受付のミセス・Jがものすごく子供好きで良く相手をしてくれたので、

しばらくの間はホントに何とかなっていた。

でも、半年後こうくんはどんどん多動になりムチャクチャになって、

ミセス・Jの手に負えなくなりつつあった。

そんなある日、ミセス・Jが真面目な顔で私に言った。

「コディ(こうくんの愛称)はどうして私の英語を分かってくれないのかしら?」

一瞬、答えに詰まった。

ちょうど「自閉症」と診断されたばかりで、私の心はドロ〜ンとしていた。

だから、その類の事を聞かれるのはホントは一番辛い時期だった。

でも、ミセス・Jはとてもいい人で、すごくこうくんをかわいがってくれていたから

正直に答えなければ失礼だと思った。

そして、いつかはちゃんと伝えなければと心の準備もしていた。

「ミセス・J・・・・コディは自閉症なの。だから、英語だけじゃなく私の話す日本語も

理解できていないのよ。」

明るく言い始めたつもりだったのに、やはり最後は唇が震えた。

日本だったらこの後、重苦しい気まずい空気が流れてしまうかもしれない。

でも、ミセス・Jはもちろん全然違った。

「まぁそうだったの。でも彼ったらほんとにハンサムよね。」

”Oh,really? But he is beautiful,isn't he?”

ニッコリ笑ってそう言った。

ミセス・Jの明るい声は待合い室に響き、そこにいた人達まで巻き込んだ。

彼女はこうくんがいかにおちゃめないたずらっ子かを説明し始め、

待合室にいた人達は、こうくんがたった10分の間に成し遂げた数々の武勇伝

(トイレにポップコーンをバラまいたとか、目にも止まらぬ速さでカルテを

抜き取ったとか、サーカスの芸人のように窓枠によじ登ったなど・・・・)

を聞いて、大笑いしていた。


数ヶ月後、ミセス・Jはリタイア(退職)し、

ご主人と一緒にフロリダへ引っ越したので会えなくなってしまったのだが、

彼女の言葉はずっと私の心に残っていて、辛いときにいつも支えてくれた。

残念ながら、日本に帰国したらきっとこんな経験はできないだろうと思う。

けれど、シーンとしても気まずい空気が流れてもニッコリ笑って

堂々としていたいと思う。

誰も悪くないし、何かいけないことをしている訳でもないのだから。

私達は決して不幸なかわいそうな人達ではない。

これは強がりではなく、当たり前のことだ。


ちなみに、写真を見ていただければおわかりの様に、こうくんははっきり言って

かなりの美形だ(核爆)

ミセス・Jは私を勇気づけようと思ったわけではなく、ホントに見たまま

感じたままをごくフツーに言葉にしただけだと思う。

だからこそ、私の心に残っているのだ。


ニコニコ笑ってとってもかわいい自閉症児が多いという事実を知らない人は

結構多い。

「端正な顔立ち」を特徴の一つに上げている本すらある位だから、

これは決して親の欲目じゃありません。念のため。



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