2004年7月〜12月



<こうままの憂鬱>


5月のとある日曜日、こうくんはリバーさんと今年初めてのプールに行った。
大好きなプール・・・と誰もが思っていたのに、こうくんは拒否した。
あの、くじらのこうくんがプールを拒否するなんて、誰が想像しただろう。
6月からリバーさんの後を引き継いだとよっちも苦悩している。
更衣室で逃げまどい、悲しげに泣くこうくん。
とよっちが撮影した動画(音声付き)を見て戦慄するこうまま。
こうくんは完全に混乱しておびえている。

唯一、こうくんの心を安定させることが出来ていた砂遊び。
その砂遊びも、すでに遊びの域をとっくに超えて、しがみつきになっている。
不安が限界に達しつつある。

暑い夏が来る。
炎天下、こうくんがプール以外で過ごせる方法などあるのか。

どこへ行こうが、何をしようが、行き当たりばったりでも、ど〜でも良かった時期は終わった。
予告をしなければいけない。
こうくん自身がそれを必要とする時期が来た。
もちろん、これまでも、大まかな予告は具体物で示してしてきた。
でも、それじゃ足りない。
いまだ、写真を理解できないこうくんに、細かいスケジュールの提示をしなければいけない。
絵は無理でも、せめて写真が理解できるようになってからで間に合う・・・と思っていた。
甘かった。
間に合わない。
これ以上、混沌とした不安の中で生活させるわけにはいかない。
破綻する。

もしかして、こうくんは、すっごく柔軟でお気楽な珍しいタイプの自閉ちゃんで
その場に合わせて状況判断出来ちゃうヤツに育つのかと内心期待していた。
でも、やっぱり、そんなハズはなかった。

暑い暑い夏が来る。
スケジュールはほぼ、日替わりメニュー・・・(号泣)
戦いの夏がやってくる。
私はどこまでこうくんに寄り添い、支援することができるのか。
恐ろしくて震える。


(意味不明の方は読み飛ばして下さい。)

(2004.7.1)




<1日遅れのBirthday>


「今日は、この夏一番の暑さになる見込みで・・・」と朝のニュースで言っていた。
新聞には熱中症で死亡された方の記事が載っていた。

うだるような日差しが降り注ぐ事務所で、懸命に弥生ちゃん(会計ソフト)と戦うこうまま。
1階のディサービスの利用者さんがお弁当を運んできてくれて
「うわっ、もうお昼かよっっ」と思った時、携帯が鳴った。
相手はこうくんの担任、マイ先生。
「こうくんが、プールの後で発作を起こして、今、救急車を呼んだところです。」
「分かりました、すぐ伺います」
実は、こうままは、こうくんの通う養護学校から車で5分の事務所で働いている。
普通なら、搬送先を聞いて、病院に行く場面なのだが、間に合ってしまう距離なのだ。
ハンドルを握りながら考える。
こうくんが過去に起こした発作は2種類。
喘息発作と熱性けいれん。
今朝はこれまでになく朝から元気で、朝食も良く食べていた。
喘息発作の線は薄い。
この暑さ・・・熱性けいれんかなぁ・・・
でも、プールの後というのが、ひっかかる。
ここの所、水を拒否しているこうくん。
水でショック症状起こすなんてこともあるのかなぁ・・
そんな事を考えながら学校の門をくぐる。
救急車は既に到着していたが、誰もいなかったので、こうくんの教室に向かう。
ストレッチャーに乗せられたこうくんが廊下を運ばれてくる所だった。
目が泳ぎ、唇は蒼白で、不自然に体がカクカク震えていた。
救急車に運び込みながら、テキパキとマイ先生と母に質問をする隊員。
良いな〜、プロだなぁ。
プールの後、給食までの時間、椅子に座っていたこうくんが突然ガクっと崩れ落ちて
そこから硬直し、発作が始まったらしい。
15分が経過しているとの事だった。
「熱、ありませんか?」と聞くと
「今、計ってますが・・・あ、9度4分です。」
「息子は熱性けいれんは何度か起こしていますが、
脳波検査でてんかん波が出たことはありません。」
そう告げると、「じゃ、小児科か?」と救急隊の方たちが顔を見合わせる。
てんかん発作だと児童精神科とか脳神経外科とかになるんだろうか?
どちらにしろ、搬送先が決まるまでは動けないので
マイ先生にこうくんの着替えとおむつを持ってきてもらう。
病院でおもらしして、着替えやおむつがないと焦るからねぇ。
何しろ、おむつのサイズがフツーじゃないから売店に売ってないのだ。

受け入れ先の病院が学校から15分ほどのT市民病院の小児科に決まり、
マイ先生と二人で救急車に乗り込む。
こうくんは、硬直は既におさまっていたが、
目はうつろで舌が不自然に動き、手足をバタバタさせていた。

こうくんは、これまでに4回、熱性けいれんで救急車に乗っている。
前回の時は、けいれんが45分続いた。
救急車の中でも硬直していたので、隊員の方もかなり焦っていたし、
私も、これはもう髄膜炎か脳炎だろうと思って覚悟を決めていたのだけれど、
結局、な〜んともなくて、数日後に受けた脳波検査も異常なしだった。
でも、けいれん発作というのは、見た目がかなりハードだし
こうくんの場合、かなり長く続くので周囲は慌てふためく。
一般的に熱性けいれんは乳幼児に起こるモノで、あまり再発しない。
10分以上けいれんが続くことは、めったにない(続いたら別の病気が疑われる)
こうくんのけいれん発作は長いのだが、毎回異常なしで帰される。
不思議な話だ。
まぁ、やっぱフツーではないと思うけども、こればっかりは仕方ないもんねぇ。

病院に着くと、ちょうどお昼だったので、小児科の待合室は空いていた。
担当のドクターはもしかして20台?ってくらいの若くて綺麗な女医さん。
問診の仕方が明快で、かなり好印象。
ふふっっとほくそえんでしまった。
これは、早く帰れるかも(ニタリ)

一通りの問診が済んだ後、「じゃ、血液検査と点滴・・・あ、点滴はできる?」
そうそう、やっぱり、私の見立ては正しい。
問答無用じゃないドクターって良いですよねぇ♪
「どうしても必要でしたら、タオルです巻きにすれば出来ると思います。」と応えると、
「じゃ、血液検査だけにしましょ。」とあっさり。
ふふ・・・良かった〜。
「あのぉ・・・、点滴が必要な処置でしたら・・・」とマイ先生。
暴れるこうくんを押さえる覚悟で言って下さっている。
有り難いなぁ・・・
そう言えば、この暑さの中でこうくんがお茶を1杯しか飲んでいないのを心配していた。
「午前中、水分が取れていないみたいなので、水分補給が必要なら・・」と私が加えたら
美人ドクターは「いえ、脱水の症状はないから、その必要ないわ」と明快。
そう・・・こういう時の点滴というのは、いわゆる「血管確保」だ。
血液検査の結果に異常があった場合、迅速に薬を入れるための予備的な処置だと思う。
もちろん、それは大切な処置なのだと思うけれど、
こうくんんの場合、これまで全て「血液検査に異常なかったので、点滴終わります」になっていた。
ダイアップ(けいれん止め)で落ち着いて、そのままおいとけばすやすや眠るのに
点滴のせいで、めっちゃ暴れて、お互いにヘトヘトになるってのを何度も経験してきた。
単なる血管確保なら、出来ることならパスしたい。
検査結果に異常があった時点で、点滴するなら納得できるし。
ドクターがそれでも点滴を指示したら素直に従い、とよっちに電話しようと思っていた。
とよっちは事務所にいる。
おそらく、私から要請があればいつでも出動の体制でいてくれたと思う。
こうくんの点滴を経験して頂くのもいいかも・・とホンのちょっとだけ思ったが(笑)
何しろ、暑いし、早く帰った方が無難だ。
てな訳で、点滴ナシで済んだこうくんは、すやすやすや・・・
血液検査も異常無し。
「まぁ、暑かったから、急に体温が上がっちゃったのかな〜」
つまり、『急激な体温上昇による熱性けいれん』という診断だ。
「薬は・・・飲める?」と聞くので
「どうしても必要なモノでしたら、拘束して無理矢理飲ませることはできます。」と応えると
美人の女医さんはニコッと笑って
「抗生剤は必要ないから、薬はやめときましょ。ダイアップはある?」
良いな〜〜〜、この先生。
そりゃ、ダイアップは欲しいですっっ。
ダイアップって、大量には処方してくれないから、とっても有り難い。
ダイアップ3錠の処方箋を頂き、
くーくー眠るこうくんを車にのせて帰宅したのは3時すぎ。
救急車で運ばれてから3時間で帰宅なんて、最短記録だっっ。
ああ、アリガタヤ。
この夏初めて「冷房」を入れた寝室になだれ込む。
あ〜、ただの熱性けいれんで良かった〜(おいおい・・・・)

「バイバ〜イ」という声にはっとして時計を見たら、5時。
バボーが帰ってきたのだ。
マズイ。
今日は、バボーの誕生日だったんだ。
帰りにチョコレートケーキを買ってくるつもりだったんだ。

くぅぅぅぅぅぅ(号泣)

あわてて1階に降りて、こうくんの状況を説明する。
「ふ〜ん、わかった。じゃ、パン食べていい?」
そら、そうですな・・・
ばぁちゃんが帰ってくるのは6時過ぎ・・・
母が食事を作れないなら、腹ごしらえが必要ですなぁ。
ウィンナーロールパンをオーブントースターに並べ、牛乳を用意していたら
「こうくん、寝てるの?」と聞く。
「うううん、起きてるけど、熱がまだ高いからゴロゴロしてるよ」
そう言ったら、顔色が変わって
「ごめんね」と言う。
なんで、謝るんだ!!!!
こういう時のこうくんは熱が上がると又、けいれんを起こす可能性がある。
熱が下がるまで、びっちり付き添っていないとイケナイのだ。
バボーは、こうくんを見ていないとイケナイのに
自分の食事の用意をさせてごめんねと謝っているのだ。
お母さんの方こそ、誕生日なのに、ごめんよぉぉぉぉ(号泣)
こういう時、体が二つあったらなぁと思う。
世の母親は皆思う事なのだろう。

バボーが食べ終わって、宿題を持って部屋に入るのを見届けてから、寝室に戻ると
こうくんは、ふえ〜〜〜んと力なく泣いた。
しばらく添い寝していたら、くーくー寝始めたので、バボーの部屋に行く。
「今日、ケーキ買って来れなかったんだ。ごめんね。明日、一緒に買いに行こうね」と言ったら
「ホント?じゃ、絵の描いてある四角いアメリカのケーキね!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おい、それは、まさか、去年「冗談じゃない」と却下した
あの、どでかい、ひらべったい、アメリカン・バースデー・ケーキの事か???

アメリカのバースデーケーキは、長方形をしている。
しかも、生クリームは御法度。(なぜなんだ〜〜〜)
アイシングたっぷりの原色バリバリの、口に含んだらジャリジャリする
トンデモナイ味のするケーキなのだ。
でも、
バボーにとってのバーステーケーキは、絶対にその四角いケーキらしいのだ。
もちろん、去年見たケーキは日本のお店で売っているケーキなのだから、
いくら外見はアメリカのバースデーケーキでも
味はちゃんとしているとは思う・・・(確か生クリームデコだったし・・)
しかし、何しろでかい(20人分はありそう)上に、細かい絵が描いてあるからめっちゃ高いのだ。
てめ〜〜〜、さっきの殊勝な態度と随分ちがうじゃないかっっっ。
親の弱みにつけ込むなんて事、いつ覚えたんだ!!
2万円もするケーキ、ただ今財政難の我が家で買えるかっっっ
却下だ、却下っっっ



翌日、こうくんは、元気に飛び跳ねていた。
っていうか、いつも通りのこうくんになっていた。

←キッチンで盗水(?)するいつも通りのこうくん。
←現場に残されたブツ。

バースデーケーキは、生チョコのデコ(2,000円也)を買った。


1日遅れのバースデー
バボー、10歳おめでとうo(*^ー ^*)oにこっ♪


(2004.7.10)



<かわいそうなプールのお話>

夏休みを間近に控え、お庭プールの作業は急ピッチで進んでおりました。

梅雨時、ブルーシートを張って、防水ペイントを施すこう父。
やはり、プールは青くなければイケマセン。


こうくんの命を守るために、作らねばならないものが
まだまだたくさんあるようです・・・・
頑張れ、こう父!!!


ようやく根付いた芝生をはがし取るこうくん。


りっぱな温水シャワーもつきましたo(*^ー ^*)oにこっ♪
全ては、お水大好きなこうくんのため。


バボーは真剣にプール掃除でございます。

でもって、ついにお庭プール完成!!!

なぁんて、素晴らしいプールでしょう!!

なのに、なのに、なのに!!!

完成したプールに近づきもしないって、どゆこと???

プール開きは、総勢23名で華やかに(?)行われました。
おおはしゃぎで水と戯れるお子ちゃま方を尻目に
あくまでも、マイペースに地味に遊ぶこうくん・・・


ああ、くじらのこうくんはいずこへ・・・
4歳の頃・・・・ 小学2年生の頃・・・って、去年のことじゃんか!!!

期待を裏切るのが子どもの仕事なのでしょう。
が・・・
フツー、一般家庭の庭にプールなんて作らないよねぇ。
アンタが毎年一日中プール遊びに没頭してたから、作ったんでしょうが!!!
礼儀ってモノをわきまえなさいぃぃぃぃ
傷心のこう父&こうじじをお慰めする言葉が見つからないこうままです・・・・

(2004.9.4)




<四角いケーキの波紋>

先日、エッセイにバボーが誕生日の四角いケーキをゲット出来なかった事を書いたら
私の周囲は非難ごうごう・・・・
年に一度帰国するアメリカ在住の親友Sなどは
「信じられない。私だったら5万でも買う!!今からでも買え」と豪語し
こうままの勤務先であるNPO法人の居宅介護事業所ヘルパーとよっちは
「バボーちゃんファンの僕としては切ないな〜。
スクロールしながら、絶対こうまま買うよなって信じてエッセイ読んでたのに・・・」

だって、2万ですよ、2万。
我が家の食費10日分ですよ!!
それも、絶対6人家族では食べきれない量なんですよ。
フツー、買わないでしょう。

救世主が現れました。
こうままが働いている法人の理事、花ママ(息子のKAZUさんは32歳の自閉様♪)です。
大変上品で物腰柔らかな(しかし、一本筋が通っている)花ママは
我が家のじいちゃん、ばあちゃんをも虜にし、
バボーに至っては「今度はいつ花ママのお家に行ける?」と繰り返す有様。
「お前もああいう風にならにゃイカン」とじいちゃんは言いますが
無理なお話です。

夏休み中、私もばあちゃんも仕事で、友人にもバボーをお願いできなかった日
バボーは、花ママのお家で遊ばせてもらいました。
すっかり仲良くなった花ママとバボーは
こうままに内緒で、四角いケーキを作る約束していたのです・・・



1か月遅れの「四角いバースデーケーキ」をゲットしたバボー。
良かったねぇ、バボーォォォォォ(号泣)
花ママ、ホントにありがとう。
私には絶対マネできません。
バボーに卵割らせて、お粉ふらせて、混ぜさせるなんて!!!
なぁんて、気が練れているんでしょう。
私だったら、
「うわっ、黄身がまざる〜、ひぃ〜、ダマになる〜、やめてくれ〜」
絶対手を出して、自分が作っちゃいます。
こうくんに関しては、自分でも驚くほど忍耐強い私ですが
バボーに対しては、全然待てないガミガミ母になっちゃいます。
分かってるんですけども・・・・・


KAZUさんの演奏(ほんわか癒し系)をBGMに、せっかちな自分を反省しながら
バボーが作ったふわっふわの「四角いケーキ」を頂いたこうまま。
めっちゃおいしかったです。

帰りの車の中でバボーが言いました。
「どうしてKAZUさんはピアノが弾けるの?」
「毎週、ピアノの先生が家に来てくれて、教えてくれるんだって」
「その先生は迷惑じゃなかったの?」
「うん、KAZUさんにピアノを教えるのが、すっごく楽しいんだって」
「ふぅ〜ん」

バボーも、色々な事を考えて、色々な事を思っているのでしょう。
私もいっぱい考えた一日でした。

(2004.9.17)



<ああ、プール>

こうくんのプール拒否がどうしても納得できないこうまま。
めっちゃ楽しいプールなら、入れるのではないか?
そう思って、海辺のリゾートラグーナ蒲郡に行ってみることにました。
去年、ものすごく行きたかったのですが、あまりの人出に気後れして行けなかったのです。
我が妹、し〜にゃん一家が遊びに来る日にあわせて、決行です。
開演時間に到着したので、比較的空いていて、入場や着替えはなんとかクリア。
しか〜し
こうくん、こう父にへばりついて、離れません。


(隣は、バボー&RON君ペア)

流れるプールや波のプール
色々試しましたが、ぜ〜んぶ怖がっています。
もう、プールはダメだから乗り物にでも乗ろうとプールの外に出たら
お子ちゃま様ビニールプールが・・・
大喜びで飛び込むこうくん


本日、初めての笑顔がビニールプールかよっっっ
ね、なんで?どうして?
ココまで来て、どうしてビニールプール?

どっと疲れた一日でございました。


それでも、諦めきれないこうまま。
バボーの小学校のプール当番の日
ヘルパー・とよっちにこうくんを託してみました。


ま、それなりに、とよっちの背中で喜んでおりましたが・・・


深いプールはダメなのでしょうか。
でも、これは良い事です。
何しろ、水はとってもコワイものなのですから。

数日後、バボーの学校で、水泳記録会がありました。
何の迷いもなくこうくんを連れて行きました。
去年までは、プールサイドで見学、などという危険な事は絶対にできませんでした。
でも、今のこうくんは、服のままプールに飛び込んだりなんてしません。
心おきなくバボーを応援することが出来ました。

プール拒否は悲しいけれど
これで、水の事故の可能性はかなり低くなるし
学校裏のきったない池にも飛び込まないでしょうし
ま、いい事もあるよね、と自分で自分を納得させたこうままです。

(2004.9.30)




<水なんか怖くない!!>

夏休みも終わり、ちょっと涼しくなってきた9月、
我が事業所のヘルパー・とよっちが
「次回のガイドヘルプ、こうくんと伊良湖に行ってみたいんですけど、どうですか〜?」と聞くので、
何にも考えずに「うん、是非、お願いします〜」とカンタンに賛成した。

渥美半島の先端にある伊良湖(湖じゃありません。海辺です)
実は、夏休み中に家族で鳥羽までフェリーに乗ってみようと計画していたのだが
台風で行けなかった。(ものすごく綿密に調べたのに・・・)
そのフェリーの発着所が「伊良湖」なので
「ついでにフェリーにも乗ってみちゃう〜?」
「え・・・・」
ビックリ目になるとよっち。(ご・・ごめん・・・冗談だってば・・・・)

一人でこうくんをフェリーに乗せられる人間は現在のところ存在しない。
(というか、私が許可しない)

伊良湖は「海辺」だ。
目の前はざぶ〜ん、ざぶ〜んの動く水(海とも言う)
去年だったらエライことなので、
きっちり下調べ(どこで着替えられるかとか、緊急時にどこに連絡すればいいかとか・・)して
おとな数人がベタ付きしないと絶対に行けなかったと思うのだが、
今年のこうくんは違う。
深いプールは完全拒否し、
プールサイドでバボーの水泳記録会を見学できたヤツである。
まちがっても、海に飛び込むなんてこた〜ないだろう。
どうぞ、思う存分綺麗な浜辺で砂遊びしてきて下さい、と気軽にお任せした。

とは言え、
伊良湖に行く道のりだって、去年のこうくんからしたら、どエライことだ。
何しろ、電車に乗ってバスに乗って行くんだから。
しかも、利用するのは「豊鉄」。
この電車、何と、車両間の仕切がない。
一番前の車両から最後の車両まで、ドアがないわけで・・・
走り回ったらえらく疲れるだろうと思うのだが
とよっちは、そういう電車でこうくんがどういう態度をとるか見てみたいらしい。
全くもって、奇特な若干27歳である。

取りあえず、私はな〜んの心配も特別な準備も下調べもせずに、
いつものように外出用リュックにお着替えやらおしぼりやらを入れて送り出した。
ま、命にかかわるような場面はあるまい。


伊良湖の海岸でまったり〜

とよっちも、私もこうくんをあなどっていた。
この夏、こうくんはすっかり「水が怖い」ことを知ったと思っていた。
だから、砂浜で大人しく砂遊びに興じると思いこんでいた。
しかし
くじらのこうくんがそんな簡単に悟る訳はなかったのだ・・・

何の迷いもなく海にザブザブ入っていくこうくん。
そして、ざっばーんと体全体海の中へ倒れ込み
お魚になった・・・・
とよっち慌てて制止モード(なので、写真なし)

わずか20分で浜辺から退散。
海水浴シーズンの終わった伊良湖に「シャワー」はない。
とよっちは、ドロドロになりながら障害者用トイレを探し出し
海水と砂でベタベタのこうくんの着替えをしたらしい。
「今日は、まじでギリギリでした」
そう正直に報告するとよっち。
私ら、ちょっと甘かったよね・・・・
二人揃って、水着の用意なんて考えてもいなかったもの。
どこでシャワーが利用できるかも調べてなかったし。(きっとあったハズ)

それにしても
水が怖いんじゃなかったとしたら、
こうくんは、プールの一体どこがお気に召さなかったんでしょうねぇ・・
ナゾの解明は来年の夏に持ち越しである。

<おまけ>

初めて食べた「大アサリ」のお味は?
(食券のボタンを押してしまったので、自己責任で・・・)

(2004.10.12)




<こうまま、大いにうろたえる・・・>

先日、こうくんの学校で文化祭があった。
クラス毎に趣向をこらしたゲームや作品の展示があって、
バボーは毎年この行事をものすごく楽しみにしている。
壁中にお絵かきしても良いお部屋やら、工作のお部屋やら、ゲームのお部屋やら・・・
そらもう、バボーにとっては夢のような空間が広がっている。
昨年は、高等部まできっちり回って思いっきり楽しんでいた。
こうくんも紙吹雪の部屋で半日まったりしていた。

が、今年は我が家の法事と重なってしまったため、小一時間で帰らなければイケナイ。
こう父は準備で忙しくて来られないから、バボーを連れて行くことは出来ない。
こうくんも紙吹雪の部屋からすぐに引きずり出さなければイケナイ。
ちょっと寂しい気分で学校の門をくぐった。

低学年の出し物は一応回らねばと思い、最初に「風船のお部屋」に入る。
そこは、大きな風船が足の踏み場もないほどぎっしりつまったお部屋で
ショッピングセンターのちゃちな風船の部屋とはスケールが違う。
子供達がもう夢心地で風船と戯れている中
風船を飛ばすための送風口に顔を近づけてうっとりしているこうくん。
「こうくん、風船をこうするのよ〜」と顔見知りの先生に言われても風船には見向きもせず・・・
「ううむ・・・さすが、期待通りの遊び方はしないのね」と感心されておりました。
どこかでパーンと風船が割れると、すかさず飛びついて割れたカスをゲット。
お口に入れてかみかみかみ・・・
(気道につまると危ないのでよい子は真似してはイケマセン)
送風口に張り付いていると風船を飛ばしたい子の邪魔になるので早々に退散。

さて、次はこうくんの教室でやっている「ボールスライーダー&ボールプール」に行こうと思って
こうくんと手をつなぐ。
既に前日に一通り回っているこうくんは、行きたいところはある程度分かっているはずだ。
こういう場合、手はつないでいても、リードするのはこうくん。
私はこうくんが引っ張る方向へ素直に従うことにしている。
廊下の突き当たりがボールの部屋なので、当然、そこへ直行すると思っていた。
ところが、こうくんは手前の教室に入ろうとしている。
そこは、3年生の作品が展示された部屋。

や・・やばい、とても私一人では対応できない。

人様の作品を壊したらエライコトじゃ。
そう思って、ちょっと引っ張ってやり過ごそうとしたら、
私の手をふりほどいて飛び込んでしまった。
大あわてで追いかけると、
こうくんは、教室の隅に走っていって、くるっときびすをかえし、私に向かってエヘっと笑った。
これまでに見たこともない、照れたような、少し得意げな、何とも言えない笑顔。
?????
何、こうくん?どうしたの?
ふと、こうくんの隣に飾られたぞうさんを見ると

!!!!!!!!

そこには、こうくんの名前が・・・・

え????
こうくん、私に自分の作品を見せてくれているの?
ウソ・・・そんな、馬鹿な。
あり得ないでしょう、そんな事。
頭の中が真っ白になって、立ちつくし、うろたえるこうまま。

バサッッッッl

その音で、ハタと我に返る。
こうくんが、何人かの作品をまとめて留めてあった緑の布を引っぺがしてしまった。
くうぅぅぅぅ・・・
元に戻そうと格闘していたら、向かい側に展示してあった粘土作品にかぶりつくこうくん。
だめじゃん、助けが要るじゃん。

こうくんを、粘土から引っぺがし、抱えて廊下に引きずり出し、手の空いている先生を捜す。
「せんせぇ〜〜〜、すみませぇん、あそこの作品、はがしちゃいましたぁ」
引っぺがしてしまった布と作品をお渡しして逃げるように立ち去る。

ねぇ、こうくん、こうくんってばぁ・・・・
おかあさんにぞうさんを見せてくれたの?
もしかして、かぶりついていたのは自分の作品だったりなんかする?
そんな訳ないよねぇ・・・

私はこうくんの認知発達に関しては、かなり疑り深い。
昨年、「給食、ちゃんと自分のものを分かって座って食べてますよ」
というM先生の言葉をこれっぽっちも信用しなかったので、
業を煮やしたM先生が、給食の様子を固定ビデオでバッチリ撮って下さったという過去を持つ。
疑って疑って疑い倒して、それで確証がもてたものだけを信じるクセがついている。
これは、絶望しないための自己防衛本能だと思う。
この先長いんだから、いちいち期待して裏切られていたら身がもたない。
「昨日、バイバイしてくれたよ〜」なんて言われて喜ぶような
そんなナイーブさはほんのちょびっとも持ち合わせていないカワイクナイ女なのだ。

その私が、思いっきりうろたえた。
防御システムが一瞬解除されてしまった。
そういう「笑顔」だったのだ。

帰宅してこう父とばぁちゃんに話したら、案の定一笑に付された。
真相はわからない。
でも、
そんな気がしたのだ。

たった小一時間しか参加できなかった文化祭で
とてつもなくでっかいものを得たのかもしれない。

これまで、親がヘトヘトになるので半日で帰宅していた文化祭。
来年はお弁当持参して、じっくり1日参加してみようと思う。

子どもは成長するんだ。
ホントにそうなんだ。
あなどってはイケナイ。

(2004.11.23)




<こうくん、五平餅に挑む・・・・>
先日、地元N町の手親の会(育成会)のクリスマス会がありました。
超僻地にある会なので、会員は16家族しかいなくて、小学生は2家族(!!!)
こうくんは、最年少の新人会員なので、ぜぇんぶお膳立てしてもらっております。
こういう形で参加できる会が一つあると、ホント有り難いです。

とってもアットホームで仲の良い会なのですが、
1年後にN町が隣のO市と合併する関係で、手親の会も吸収され、なくなってしまいます。
市町村合併って・・・いいんだか、悪いんだかよく分かりません。
良くなる事っていったら
水道料が安くなることとゴミ袋が安くなることくらいしか私たち一般人には見えてきません。
あ、制度がO市に準ずる事になるので
重度の子(A判定)でも障害児指定保育園への入園は可能になるはずです。
N町には『軽度・中度のみ』というフザケた規定があったので、
こうくんは、入れませんでした。(おかげで9か月在宅だった!!)
保育園関連は多分、充実しますね〜。
あとは、不便になることばかりです。
僻地ならではのニーズに応えてきた制度は全てなくなります。
うちのじいちゃんは委員としてず〜っと合併協議会に参加していましたが、
「何のために合併するのかかさっぱりわからん」と言っております。
そりゃ、まぁ、お国のためですな〜。

話がそれました。
クリスマス会です。
今回、初めて参加したのですが、いやぁ、たまげました。
みんなで五平餅(ごへいもち)を作ったんですよ!!!
五平餅って、知ってますか?
私は愛知にヨメに来て、初めて知った食べ物です。
私の生まれ育った静岡市では見たことありません。
地域によってその形は色々あるようですが、ここ三河では
わらじのような形のでっかい五平餅を作ります。
もちろん、私は家で作ったことなどありません!!!
こういう昔の食べ物って、観光地とかで買って食べるものですよね????
それを、障害者の集うクリスマス会でごくフツーにやってしまうN町手親。
恐るべし。
練ったご飯を板に挟んで
ラップでくるみます。
上からペタペタ
たたいて、平らにします。
こうくん・こうまま・マッキー
の3人分作りました

炭火で軽くあぶります。
こうくん、一応ウチワで仰いでみる・・・
取りあえず
触ってカクニン。
次に
なめてカクニン。

サンタクロースをクラッカーで
お出迎え・・・
思いっきりのけぞるこうくん

高齢者が多いので、とってものんびり・まったりのクリスマス会でした。
普段、ズダダダダ〜〜ン、ガッシャン、ドンドン、カラカラカラ〜
な生活をしている私たち親子にとっては別世界
いやぁ、疲れました(爆)
マッキーもホントにお疲れ様でした♪
これに懲りずに又ヘルプ宜しくねo(*^ー ^*)oにこっ♪
(注・マッキーはリバーさんの後任者でございます)

(2004.12.12)




<若かったあの頃>

アメリカにいた頃、2か月おきくらいに「ビデオレター」をじいちゃんばあちゃんに送っていた。
渡米当時、バボーは3歳、こうくんは1歳だった。
一番かわいい盛りの二人の様子をじいちゃんばあちゃんに見て欲しくてせっせと撮って、
長すぎたら飽きるだろうと、毎回20分程度に編集して送っていた。

先日、そのビデオを帰国以来初めて見た。
足下もまたおぼつかないバブバブちゃんのこうくん
舌足らずにしゃべる、めっちゃかわいいバボー
そして、何にも知らずに無邪気に子育てを楽しんでいる私がそこにいた。

こうくんに障害がある事を知らなかったあの頃。
男の子なんてこんなモノなのだろうと思って育てていた気がする。
けれども、
映像を見たら、1歳のこうくんは、正真正銘の自閉ちゃんだった。
どこからどう見ても自閉ちゃんだった。
なのに、私ってばじぇんじぇん気づかなかったんだ!!
うはははは・・・・

こうくんに障害があると分かってからの2歳以降のビデオも
それまでと同じように淡々と流れていく。
でも、
未就学児が通う通園施設(spice)でのクリスマス会のビデオを見ていたら
その時の気持ちがリアルによみがえってきて、泣けてきた。
障害があるって言われたばっかりの頃。
まだ英語も全然わからなかった。(イヤ、今もわからんが)
自分の子供の状態も、今置かれている状況も、この先どうなるのかも、何もわからなかった。

夜泣くとこう父が心配するから真っ昼間に布団をかぶって大泣きした。
こうくんが昼寝したのを確認して、隣の寝室で大声でわんわん泣いた。
好きな時に泣くことなど許されなかった。
こうくんが起きている時にメソメソ泣いていたら、何が起こるかわからない。
いなくなってしまうかもしれない。
あんな中で、よく頑張ったよねぇ。偉かったねぇ。

若かったんだよなぁ。

それにしても
ビデオって・・・・すごい。
すっかり忘れていた記憶を呼び覚ますだけでなく
その時見過ごしていたものまで教えてくれる。

記録って大事。
最近、全然ビデオを撮っていませんが、せっせと撮らねばと思いました。
もちろん、老後の楽しみにo(*^ー ^*)oにこっ♪

(2004.12.18)





<年末恒例・お餅つき>


見てますね〜、見てますね〜


こんな感じで毎年餅つきしています♪
ちなみに、こうままは長男のヨメです(笑)

(2004.12.28)


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