2002年のエッセイ


<オーダーメイド・ハーネス>

こうくんとハーネス(胴ベルト)の歴史は長い。
古くは(?)1歳代、お散歩中に全然まっすぐ歩かないので
トイザラスのベビーコーナーでベスト型の迷子防止ベルトを購入し愛用していた。
しかし、年齢が高くなるにしたがい、「ベビー用」はやっぱり赤ちゃん用であって、3歳児には無用の長物であることを身をもって教えられる事態となり
その後は、母が色々と手作りしてしのいでいた。

半年前の帰国の頃に、バギーに付けて逃亡を防止していたハーネスが
3ケ月ほど前からどうにもこうにも使えなくなった。
ほんのちょっとの隙間から腕を入れて脱出してしまうのだ。
時を同じくして、こうくんは砂芸にはまった。
一歩もこちらの思惑通りには歩かない。
バギーが止まった瞬間に抜け出して、地面にへばりつき、砂芸開始。
ひっぺがしてバギーに再度のせようものなら、大暴れ(T.T)
まず最初に困ったのは、バボーの送迎。
バボーは集団登校しているのだけれど、集合場所までは送り迎えをしなければならない。
そのわずか数百メートルをこうくん連れでは歩けない。
ばぁちゃんは、バボーのお迎えの時間がくると仕事を中断して
家に帰ってきてくれた。
ホントは、バボーの送迎くらい母一人で済ませたいのに、出来ないのが
とても悔しかった。
なんだか、自分がなんにも出来ない無能な人間に思えて悲しかった。
こうくんはカーシートは嫌がらないから、車で行くことは出来た。
でも、車を使うにはあまりにも不自然な距離だ。
母はごくフツーにバボーの送迎をしたかったのだ。

ああ、こうくんが脱出できないハーネスが欲しい。

そう思って2ケ月。
遂に母はプロにお願いすることに決めた。

こうくんが月に何回か通っている心身障害者センターには、
週に2回装具やさんが来ていて、
肢体不自由のお子さんのための装具を作っていた。
その細やかな配慮と丁寧な仕事ぶりを毎回見ていて、すごく羨ましかった。
装具を作って貰うには、小児科を受診し、整形で検査し、お役所に書類を出すのだと言うことを、お母さん方から聞いて気が遠くなったのは3ケ月前。
初診の予約を入れるのに3ケ月はかかるこの病院で
そんな手続きを踏んでいたら、半年くらいかかってしまう。
しかも、装具を作るには身障者手帳が必要だ。
療育手帳しかないこうくんが貸与してもらえるのは
特殊マット・特殊便器・火災警報器・自動消火器・頭部保護帽・電磁調理器
しかも重度のみという制限つき。
警報器や消化器くらい必要なら自分で買えるよ。
売ってないから作って欲しいんじゃないか!!!

母は、とってもせっぱ詰まっていたので
センターに来ているM装具やさんと直接交渉してみることに決めたのだ。
こうくんをばぁちゃんに預け、センターに行き、空いた時を見計らって
バギーに固定するハーネスを作って欲しいとお願いした。
整形も通さず、手帳も使わず、実費でお願いしたいという母の無茶なお願いに
M装具の方は笑顔で
「どういうのを作ればいいんですか?」

一大決心をして臨んだ母は拍子抜けしてしまった。
なんだ、直接注文してもいいんだ。
良く考えたら装具やさんは商売なのだから実費なら何でもOKなんだよなぁ。
馬鹿な私。

そんな訳で、二日後にはこうくんを連れていってサイズを計り
翌週には試作品が出来上がった。
テントに使われている丈夫なキャンバス地のベストに調節可能なベルトが
2本ついたハーネスに、母は大満足。
これでしばらくは大丈夫。
そう確信して年末年始を試作品で過ごすことになった。
なのに、こうくんたら、首の辺りのほんのちょっとの隙間に腕を通して
脱出しちゃったんですねぇ・・・

年が明けて、試作品を装着したこうくんを連れて再びセンターへ。
装具やさんの目の前でイリュージョンを展開したこうくん・・・
おお!!
と、驚く装具やさん。
でも、そこはやっぱりプロなので、慌てず騒がず
「首の下に細いバックルをもう1本付けましょう」

バギーを預け、翌週に出来上がってきたハーネスは
まさしく母が望んでいたモノだった。


有り難う、M装具さん!!!
これで、バボーのお迎えにも行けるしスーパーにだって行けます。
ディズニーランドだってきっと大丈夫です!!!

一番上のバックルは
試作品にはなかったの。
快適・快適 バギーとの
ジョイント部分

嬉しいことに、バギーの色に合わせたブルーなので、見た目もスッキリ。
長さ調節が出来るので、厚着でも薄着でも対応出来る。
しかもメッシュ地で夏もそんなに蒸れそうもない。
M装具さんの心配りに感謝・感謝の母。

大喜びの母に、M装具さんはクールに言った。
「バックルを外せるようになったら、後ろに回しましょうね」
うわぁぁぁ。なんてプロフェッショナルなのっっ
先のコトなんてじぇんじぇん考えてなかったわ。

オーダーメイドのハーネスを使い始めて2週間。
母もばぁちゃんもすっかりこの新しいハーネスの虜。
やっぱ、プロは違うわ〜〜〜〜

ちなみに、お値段は1万2千6百円。
安い。
あまりにも安すぎる。
「材料費はほとんどかかりませんでしたから、ほとんど人件費です」(by装具やさん)

こんなに簡単なコトで何ケ月も大変な思いをしていたのかと思ったら
アホらしくなった。

よし、来月は新幹線にトライしてみよう。
さぁ、ディズニーリゾートへ向けて特訓だ!!!(大まじめ)

<ロックの館の落とし穴>

アメリカに住んでいた頃、私達はロックの館に住んでいた。(参照・ロックな我が家

帰国後、父の実家にお世話になっているのだけれど
ここが、昔ながらのむちゃくちゃひろ〜い農家の純ニッポン家屋。
最初の頃はホントに一日中追いかけ回していた。
こうくんの行動に合わせて鍵を付けたり柵をしたりしていたらきりがないので
こうくんに目が届くように使用目的別に12畳から20畳くらいずつに区切ってロックしたら
見事に構造化された鍵屋敷になった。
玄関や勝手口は特に念入りに2重3重に鍵をつけたので
超田舎の家には似つかわしくない厳重な防犯対策が施された家になった。
快適、快適。

夜中の逃亡が一番怖いので、寝室として使っている2階は、
更に要塞化している。
窓全体に防犯用の柵を付けて、1階に通じる階段の前には天井まで柵をした2重ロック付きのドアが鎮座している。
おかげで、私ら夫婦の安眠は今の所確保されている。
やっぱり人間は安心して眠らないと体に良くないですからねo(*^ー ^*)oにこっ♪


先日、バボーが学校で避難訓練を受けてきた。
「火事の時はこうやってハンカチで口を隠すんだよ。けむりをのむと死んじゃうの。あとね、けむりは上にいくから赤ちゃん歩きをするの(ハイハイの実演)」
ほほう・・ちゃんと学習してるじゃないか。偉いぞバボー。

「かいだんは使わないの。火がどばぁって来るから」
へっっ?そうなのか。なるほど。

「ねぇ。バボーが寝てるときに火事になったらどうやって逃げるの?」

うわぁぁぁぁぁぁ
大変だ。こうくんが逃亡できない2階から脱出できる人間なんていない。

げに、学校とは有意義なコトを教えてくれるトコロなり。

あな、おそろしや、ロックの館。


可動式の鍵付き格子・・・とか出来る?(→こう父&じぃちゃん)
<こうくんのお椅子>

アメリカの学校に通っていた頃
こうくんには、他の子とはちがうスペシャルな専用椅子があった。
トランジッションや食事などの時に使っていた。(参考・「療育の部屋」

帰国後、アメリカから持ってきた赤ちゃん用の椅子は破壊され、
バボーが日本で使っていた幼児用の椅子は出入り自由で、何の役にもたたなかった。
母とおばあちゃんは、食事の度に一口食べては走り出すこうくんを捕まえては椅子に戻し、押さえつけて食べさせていた。
動けるとなると、絶対にじっとしていないので、ご飯を手づかみで口に放り込み
逃げていくこうくん・・・
ああ、あの椅子があれば、こうくんは自分でスプーンを使って食べることだって
出来るのに・・・・

ところが、しばらくして、私は見つけた。
あの、スペシャル椅子と殆ど同じモノを。
それは、こうくんが通っているセンターの廊下に置いてあった。
おお!!!これよ、これ。

ちょうど訓練の日だったので心理の先生に、
「あの椅子を使えば、簡単な課題なら出来るんですけど」と言ってみた。
「う〜ん、アレはオルソーチェアといって、貸し出しもしているのだけど、肢体不自由のお子さん用なのよねぇ。こうくんの場合は普通の椅子に座ること自体が課題だから・・・」

おっしゃる通りです。はい。
もうすぐ1年生になるこうくん。普通の椅子に座れなくちゃ、話になりません。
かくして、追っかけて押さえつける日々は続く・・・・

月に2回の割合でお会いする心理の先生はとても忍耐強い方で、
毎回、何とかこうくんを座らせようと試みたり、簡単な課題をさせようと頑張ってくれたのだけども、もちろん、そんなことが出来るこうくんではない。

そして半年。
ついに、心理の先生の忍耐にも限界が・・・(爆)
「オルソーチェアを使いましょう。
オルソーチェアに座ることで集中できて課題に取り組めるなら、その方が建設的ですね。
普通の椅子に座るのは別の課題として考えてきましょう。」

ううう・・・長かったわ。やっと分かってくれたのね。

ついでに、貸し出しまでしてくれました。有り難う心理のK先生(はぁと)


遂に、念願のスペシャル椅子、ゲット。
なかなか重い オルソーチェア


もちろん、母はこんな高そうな椅子を家で使う気などさらさらありません。
壊して弁償するのもイヤだし、借り物だからと汚れに気を使っていたら
白髪が増えちゃう。

帰宅した父にゲットしてきたオルソーチェアを自慢げに見せる母。
「これ、こういう椅子なら大丈夫だと思うんだ。
心理の先生もコレに座って集中できるならその方がいいって。」

次の週末、買い物から帰ってきたら、既に出来上がっていました。
こうくん「専用」オルソーチェア。

借りてきたオルソーチェアのテーブル
で型紙をとって、板を切り抜いた。
後付とは思えない出来映え!!

もちろん、使ったのは幼児用の椅子です。
元々のテーブル部分を取り外して、テーブルだけ新しく作りました。
コンパネ(板)に椅子の色に似た家具用のシールを貼ったので、
まるでもともとついていたテーブルの様。
切った部分にモールまで貼ってある。
見た目がフツーで素敵o(*^ー ^*)oにこっ♪

テーブルの裏。
添え木にレールを取り付け
てあります。
椅子の横側。
テーブルのレールをここにはめる。
テーブルを
外した状態。

大満足の母&ばぁちゃん。
すごい!!すごい!!父ったら天才!!と大はしゃぎしていたら
じいちゃんが、ぽつり。
「わしだって、その位のモンは作れるぞ」

うわぁぁぁ
もっ、もちろん分かっているよ、じいちゃん。

長男のヨメの立場はビミョーです。

<備えあれば憂いナシ>

今日は、こうくんが月に2回参加している訓練会の
春休みキャンプの事前研修だった。
午前中は親とトレーナー(指導者)の研修で、午後は公開訓練会。
午前中の2時間は子どもを学生ボランティアさんにお任せしての研修なので、
当初、こうくんは明日からのキャンプのみ参加しようと思っていた。
でも、訓練会の世話役の方の
「公開訓練会では○○先生の指導が受けられるのよ。
そんなチャンス、滅多にないわよ」
という甘いお誘いに乗って、無謀にもこうくんも連れていった。

若いボランティアさんに「絶対、目を離さないで下さい」と何度もお願いし、
後ろ髪を引かれる思いで隣の部屋の研修会場へ・・・・
2時間後、迎えに行くと、こうくんは、楽しそうに飛び跳ねていた。
ダイジョブだったんだ、良かった〜

甘かった。

会のみんなと一緒にのんきにお弁当を食べていたら、
顔を真っ赤にした中年のおじさんが、若い店員さんを伴ってやってきた。

おじさん 「この子か?」
若い店員 「はい・・・」

おじさんは、私の顔を見据えて
「ちょっと、あんた!!! おたくの息子が
うちの店に勝手に入ってきて、座敷をめちゃくちゃにして、
昼時だっていうのに、営業できなくて、大変なことになってるんだ!!
今すぐ、見に来い」
と、すごい剣幕で怒鳴り立てた。
ボランティアさんからは何も聞いていなかったので、もう、ビックリして
お店についていく母。
お店は、こうくんを預けた部屋の斜め向い、ほんの5メートル先にあった。

あああああ・・・・・
確かに、座敷はめちゃくちゃ。
畳は、鉢植えがひっくり返って土まみれ、
お醤油のシミがあちこちに点々・・・
楊枝が散乱し、生けてあった(と思う)花がそこここに・・・・
我が家ではフツーの風景だけど、ここはお店だ。

おじさんは、ものすごく怒っていたので(当たり前だ)
私は平身低頭で謝った。
訓練会の代表の方がすぐに駆けつけてくれて、一緒に謝ってくれたが
代表の方の「障害があって・・・」の一言に、おじさんはキレた。
「そんなこと知るか!! うちには関係ない。
畳も替えなきゃいけないから、全部弁償して貰うよ。
営業妨害の分も損害賠償を請求するから」

そりゃそうだ。
お店ととこうくんの障害は関係ない。

訓練会では保険に加入しているので、
弁償や賠償の件は代表の方におまかせすることにして、
畳のシミの写真を撮ったり、被害状況の確認などをして
取りあえずは一件落着。

現場は市民会館の2階。
もちろん窓は、イリュージョンこうくんにかかれば一発OKのフツーの鍵。
ああ、飛び降りなくて良かった。
窓から、車道を1本隔てて広がる海を見つめながら
生きてて良かった・・・と思ったら
涙がぼろぼろこぼれてきた。
それを見ていた代表の方が
「分からない人にはいくら言っても仕方ないのよ。
こんなことでくじけて、もう、外には出ないなんて思っちゃダメよ。
自分を責めたらダメよ」
と、慰めてくれた。
あ・・ちがうんだけど、まぁいいか。

確かに、おじさんの言葉はきつかった。でも、
お店のおじさんが怒ったのは当然だ。
だって、子どもが突然乱入してきて、お店をめちゃくちゃにしたのに
その親は謝りにも来なかったのだから。

後でこうくん担当のボランティアさんが、私に謝りに来たけれど
お店のことは全然知らなかったらしい。
怖い・・・怖すぎる。

こうくんの甘いマスクは、どうしても障害の程度を軽く思わせてしまうらしく、
どれだけ説明しても、伝わらない。
一体、何分こうくんから目を離していたのだろう?
そして、こうくんは、あのお店からどうやって戻ってきたのだろう???
お店から追い出された所を運良く別のボラさんが見つけて、
部屋まで連れてきてくれたんだろうか?
こうくんが自力で戻ってきたとは絶対に思えない。
ナゾだ。(解明する気はない)

明日から始まる訓練キャンプ。
ホントは7泊8日だけど、無理にお願いして1泊にしてもらって良かった。
1週間なんて、絶対無理だったよ、やっぱり。


帰宅してすぐに、外資系の保険会社に勤めている友人に電話した。
「知的障害を前提に入れる損害保険で、いいのない?」

やっぱ、こういうのってガイシの方が良さそうだものね。
備えあれば憂いナシ。
もっと早く入っておくべきだったのに、うかつだったなぁ。

<追記>
その後、色々調べましたが
何と言っても「AIU保険」がオススメです。

<ウンチ・アート>

畳は怖い。
聞いてはいたけど、ホントにキョーレツ。

今日はおばあちゃんが一泊で京都に出かけていて、留守。
父も岡山出張で、かなり帰りが遅い。
そういう時に限って、やっぱり事件は起こる。

帰国初のウンチアート。
寝室の畳半畳分。
ハブラシ・・歯がたたず。
つまようじ50本くらい・・・全然ダメ。
親指にタオルを巻いて爪を立ててこする・・・指が切れそう。
だめだ、これじゃ夜が明けちゃう。
明日にしよう。
とにかく、子どもだけ寝かせよう。

ごめんね、バボー。
あんたの布団のその下の
ビニールシートのその又下の
タオルの下は・・・・

寝室の壁を見つめながら、隣に出来上がりつつあるお部屋に思いを馳せる。
ただ今、我が家は増築中。
「こうくん、やれるもんならかってみろ」の2LDK
全室フローリングで、壁にも全部板を張ってもらう予定。
依頼している大工さんは、大変腕がいい。
私たちが帰国する前に改装してくれたトイレに惚れ込み
「このトイレやってくれた大工さんに!!」と母自らが指名した。
考えることはみんな同じらしく、とっても人気があるので
あっちこっちの現場を抱えている。
だから、毎日は来てくれない。
おまけに、町の財産でもあるらしい「茅葺き屋根」の家の補修もしている。

町に一件だけ残る茅葺き屋根に比べたら、我が家のちっちゃい2LDKなんて
そりゃぁ、かすんでしまうけども・・・
でも、でも、でもっっっっ
我が家だって、とってもせっぱ詰まっているんです。
どうか、どうか、お願いします。
畳ゴシゴシは、もう、イヤです。
一刻も早く、雑巾で拭けば一発OKの板の間に住みたいんです。
お忙しいとは思いますが、我が家の2LDKの事も忘れないで下さい。
切に、切に、心から
どうか、宜しくお願い致します。

<家庭訪問>

先日、こうくんの家庭訪問があった。

毎日2回、送迎の際に先生とは顔を合わせるけれど、落ち着いてお話しする機会はなかった。
だから、家庭訪問をとっても楽しみにしていた。

一通り話が済んだあと、先生が何げなく言った。
先「こうくんはアメリカではTEACCHプログラムを受けていたんですか?」
母「ええと、TEACCHプログラムの技法は取り入れていたと思います。」
先「今後はTEACCHでやっていきたいので、それは有り難いです。
で、カーズは?」
へ????
今、何とおっしゃいました??
カーズって、あの、CARS(Childhood Autism Rating Scale)のことですか???
一瞬、頭が真っ白になり慌てる母。
先「スコアがなければ別にいいんですけど」
母「あ、すみません。あります、あります。
CARSのスコアは○○で、PEP-Rは○○が○○で・・・」
「CARS、その位ですか? 失礼ですが、もう少し重いかと思っていました。」
そう!!そうなんです。
私も結果を見たときはちょっと意外だったんです。
こうくんは、確かに「知的障害」はものすごぉくスペシャルなのだけれど
「自閉性障害」自体はものすごぉいわけじゃない。
もちろん、Severe(重度)の帯には入るけれども、どうにも手におえないほどじゃない。(と思う)
そこら辺がビミョーなんですよねぇ・・・

まさか、家庭訪問ででそんな話が出るとは思っていなかった。
アメリカから持ち帰った資料を、先生に見ていただこうと思ったのだけれど、
はて、あの資料たちは一体どこへ・・・?

思えば、帰国直前に揃えた各種の検査結果やIEPの資料は、これまでまったく浮かばれなかった。
帰国後、色んな病院等に行く度に、分厚い資料を持参した母だったけれど
殆ど目を通されることなく、その重さだけが空しく残った。
あれから半年・・・・お蔵入り寸前だったその資料が
ようやく日の目を見るかもしれない。(うるうる・・・)
良かったねぇ、おまえ達>資料

「学校に対する要望は?」と聞かれて「安全確保」と答えた母に、先生は笑ってこう言った。
「それは当たり前なんですよ。」

そうだ、そんなことは当たり前の事だった。
でも、忘れていたなぁ、その感覚・・・

帰国後の在宅9ケ月で、母は随分鍛えられた。
この地域での現実を知った。
その過程で、望むものがどんどんレベルダウンしていた事を反省した。

「お母さん、こうくんは養護学校ではフツーですよ。特にすごい訳ではありません。」

入学当日から、こうくんは先生方の背中によじ登り
アクロバットを繰り広げていた。
そのこうくんを「フツーです」と言いきって下さるとは・・・
先生はプロだ。
安心して、お任せしよう。
色々教えて貰って、
そして、どんどん要望も言っていこう。

帰宅した父に一部始終を報告すると
やっぱり、あまりの事にしばらくボー然としていた。
「すごいな、その話。じゃ、あのビデオも見て貰えるかもしれないな」

はっっっ
そうだった。ビデオもあるんだった。
帰国直前に何度もHammittに通って撮らせて貰ったビデオが。
母「でもさ、あれって一体どこにあるの?」
父「・・・・・・・・どこだっけ?」

バボーが所蔵する山のようなカートゥーン(アニメ)ビデオの中から
何としても、あの大事な1本を見つけ出さねばなるまい。
ううむ・・・・大仕事だ。
<そして誰もいなくなった・・・・>

5月のとある小雨の降る木曜日。
こうくんの通う養護学校で、運動会が行われました。

「こ・・こうくん、
カゴを運ぶんだから、持ってよっっ、お願い」
《ボク、シラナイモン》
「りんごをカゴに入れるんだよ」
《ボク、オスナデアソビタインダケドナー》
究極のポーカーフェイスこうくん。
クールすぎるのよねぇ。
さぁ、いよいよビックイベントの「徒競走」です。
こうくんは30メートル走に参加です。

位置について、よ〜い
どん!!(各者、一斉にスタート・・・?)
おい、こうくん、どこに行くんだっっっっ
(さて、こうくんはどこでしょう・・・爆)
そして、誰もいなくなった・・・・・


<「ご不快」こうくん>

6月のとある週末、し〜にゃん一家と共に東京ディズニーランドに行きました。
我が家のお抱えツアーコーディネーターし〜にゃんがFAXしてくれた
綿密なスケジュールの指示に従い、
午前2時半(!!)に出発いたしました。
土砂降りの高速を駆け抜け、きっちり、開演前に到着。(すげ〜)
パークについた途端、雨が上がったのは、し〜にゃんの妖怪パワーによるものであることを疑うモノはいませんでした。
ありがとう、し〜にゃん!!

その昔、
まだ、わてら夫婦に子供がいなかった頃、
し〜にゃんと一緒にオーストラリアへ行ったことがあります。
飛行場へ向かう高速で、雪がざんざか降り出し
高速は閉鎖され、右も左も分からないメチャ混みの一般道路を走りました。
飛行機の離陸時刻が近づき、焦りまくるわてら夫婦・・・・
その時し〜にゃんは慌てず、騒がず、大まじめにのたまったのです。
「私が乗ってないのに、飛行機が飛ぶわけないじゃない」
事実、離陸時刻を過ぎてから到着したにも関わらず
飛行機はちゃぁんと待っていました。
気疲れでヘトヘトのわてら夫婦をシリメに、悠々とツアーデスクに向かうし〜にゃん。
し〜にゃん、恐るべし。

閑話休題。
ディズニー、ディズニーo(*^ー ^*)oにこっ♪

入園してすぐのお約束は、キャラクターとの写真撮影ですね。


あ〜〜れ〜〜〜
ご無体なっっっ
おやめくださいませぇぇぇぇ


実はこの後、ミニーちゃんのスカートをめくるという狼藉をはたらいたこうくん。
ええ、そりゃあもう、下に何をはいているかが分かるくらい、思いっきり。
私たちが、逃げるようにその場を去ったことは言うまでもありません。
ミニーちゃん・・・・
お願いだから、セクハラで訴えないでね。

もちろん、ミッキーもこうくんにかかれば・・・・
ミッキーと笑顔で握手? んなわきゃぁ、ありません。
思いっきり、かぶりつきですわ。


さて、激しいアトラクションには乗れない私たちなので、
メインはやっぱりパレードとショーです。
ここで驚いたのですが、なぁんとし〜にゃん一家は
パレードを見たことがなかったのです!!!
パレードの時間は、人が少なくなるから、人気のアトラクションに並ぶのがアタリマエなのだそうで・・・・・
初めて見るパレードの素晴らしさに、いたく感激したし〜にゃん。
「TDLって色んな楽しみ方があるんだね。こうくんのおかげだねぇ」としみじみ。
のんびりとパーク内を歩きながら、
「TDLでこんな時間がすごせるなんて、ホント贅沢だわぁ」とも。
なるほど、私たちにとってはフツーの事なのだけども、
アトラクション制覇に命をかけてきたし〜にゃん一家には新鮮だったのね。

そして、もう一つ驚いたことがありました。
こうくんの「ご不快」です。
昨年のフロリダでは、周りで何が起こっても(アトラクション、パレード、ショー、大雨、花火、等々)
全く我関せずで、一心不乱に水芸にいそしんでいたこうくん。(参照・まにあ旅日記
そのこうくんが、なぁんと
カントリーベアーシアターで、壁に掛けられたでっかいシカが
不気味に喋るのを見て、大泣きしたのです。(大人が見ても不気味)
トゥーンタウンのちゃちなコースターで、
必死の形相で父にしがみついてきたらしいのです。
(去年はスプラッシュマウンテンですら平気だったのに。)
目の前で繰り広げられるキャラクターショーを
いかにも「不快」という表情で眺めていたのです。
ご不快のこうくん。  ゼベットじいさんになでられ、さらにご不快のこうくん。

や・・やめろってばっ

わてら夫婦は、もう、ショーやパレードを見るどころではアリマセン。
こうくんの表情に釘付けです。
「おい、アレ見て泣いとるぞ!見とるよな?」
「うわぁ、イヤって表情してる。アレ見て嫌がってるんだよね?
きゃぁ、すごい、すご〜〜〜い!!」
大バカ夫婦です。


周囲に何の興味も示さなかったこうくんが
これほど反応するとは正直思っていませんでした。
もう、こうくんたら、おりこうになっちゃってっっ!!!!
でも、おりこうになるって、なぁんてメンドウな事なんでしょうo(*^ー ^*)oにんまり♪
来年は、入場すら拒否するかもしれませんねぇ・・・

余談ですが
こうくんは、TDLの「救護室」を経験しました。
女どもがショッピングにうつつを抜かしている間、
父と一緒にお店の外で待っていたこうくんが
「東京ディズニーランド」と書いてある青いセロファンテープを
鼻の穴に突っ込んでしまったのです。
青いテープ・・・鬼門です(参照・まにあ日記「ビニールテープと救急車
慌てて近くの救護室に駆け込みました。
父が足を押さえ、RONパパが手を押さえ、母が頭を押さえ
万全の体制で臨む私たち。
看護婦さんもこうくんに蹴られながら頑張ってくれたのですが、
結局、テープを取り出すことは出来ませんでした。
あれからずいぶんたちますが、
どうなったんでしょうねぇ、あの青いセロファンテープ。


(付録)
お掃除を楽にするため(だと思う)
ここの小石はくっついていて
離れません。(シーにて)
別にいいの。
砂芸はどこでも出来るから。


<うちのじいちゃんて一体・・・>



こうくんやれるモンならやってみろ2LDK(2階右部分)完成間近。
しかし、ここに来て緊急事態発生。
業者の発注ミスで、仕上げの材料が届かないのです。
いくら腕のいい大工さんでも材料がなければ作業はできないわけで・・・

当初、2階の増築が完成してから(こうくんの居場所が確保できてから)
1階のリビング゙と玄関を改装することになっていました。
でも、材料が来ないので、2階が未完成のまま、
1階の改装が始まってしまったのです。
これは、ホントに予定外の展開で、母はマジで焦りました。
こうくんは普段、1階の完全防備のリビングで大暴れしています。
そのお部屋が改装工事に入ってしまったのです。
他の部屋は何の仕掛けもないくごくフツーの部屋なので、
仏壇や本棚やTVボードなどが無防備に置かれています。
こうくんが入ったら大変な事になってしまいます。
てな訳で、帰宅してから大工さんが帰る6時過ぎまでの3時間以上を
こうくんの外遊びに付き合う刑に処せられる母(T.T)
「予定外」には全くもって弱い我が家です。

ところで・・・
玄関とリビングがお色直しに入った頃
じいちゃんが何やらアヤシイ動きを始めました。
玄関横のじいちゃんの元・書斎、今はバボーのクラフトグッズとこうくんに触られたら困るグッズで足の踏み場もない状態になっていた4畳半の部屋をいじり始めたのです。
自分の元・書斎の床をはがすじいちゃん。
(注・大工さんではありません。うちのじいちゃんです。)
ふと上を見ると、すでに天井はキレイにはがされている。

じ・・・じいちゃん
チェーンソー持って、何する気っっっっ
(注・ここは部屋の中です。)
じいちゃん、それは一体何て言う名前の道具なのっっっ
(注・くどいようですが、部屋の中です。)
ようやく外に出たと思ったら
ドリルでコンクリートをはがし始めるじいちゃん。
水道工事までやるつもりかい。
道具はすべてじいちゃんの作業小屋から運ばれてきました。
うちのじいちゃんて一体・・・・・

こうくんやれるモンならやってみろ2LDKの竣工は更に遅れそうです。

<バボーのじぇらしい>
夏休みに入ったばかりのとある月曜日、
我が妹し〜にゃんとその息子RONくんが2泊の予定で遊びに来た。
バボーはその日を2週間以上も前から指折り数えて楽しみにしていた。
「あと○日でRONくん来るんだよね。バボー、胸がドキドキしちゃう」
ちょ・・ちょっと待て。
「ワクワク」だろうがっっっ
今から男の子に胸ときめいていたら、父の心臓がもたないぜ・・・


まぁ・・それは置いといて・・・
夜、RONくんがお風呂に入ろうとしたら
バボーが自分も入ると言って、リビングでおもむろに全裸になった。
まさか6年生のRONくんにバボーのロングヘアーを洗ってもらうわけにはいかないので、母が半ソデ・短パンの出で立ちで一緒に洗い場に入る。
と、その時、2階でこうくんと遊んでいたし〜にゃんの叫び声が・・・・・
な・・・何事っっっ???

し〜にゃんは、こうくんを抱きかかえて降りてきた。
そして、とっても興奮して曰(のたまわ)った。
「一人で見るにはあまりにもったいない光景だったのよ!!!」

バボーが全裸になってお風呂場に向かった直後
こうくんが大慌(おおあわ)てでパンツとズボンを脱ぎ、Tシャツも脱ごうとしていたらしい。
はは〜ん。分かる分かる。
こうくんは普段「その場にあった適切な行動」はまずしない。
だから、バボーがお風呂に入ろうとしているのを見て、自分も入ろうとして服を脱ぐなんて、確かに滅多に見られるモンじゃない。
しかも、今日やったからと言って、明日もやるとは限らない。
というか、間違いなくやらない。
だからこそ「一人で見るのはもったいない」貴重な光景になるのだ。

じいちゃんやばぁちゃんにもその時の様子を熱く語るし〜にゃん。
こうくんの体を洗って、ふと後ろを見ると、し〜にゃんがビデオを撮っている!!
さすが、我が妹よ・・・・(爆)

そんなお祭り騒ぎの最中
バボーが静かにお風呂から出てきた。
三角お目目だ・・・怒っているのね。

バボーが居なくなったお風呂場では
RONくんとこうくんの水芸合戦がくり広げられていた。
「こうくん、すげぇ・・・ぜって〜そんなに細く出せないよ」
RONくん・・・
こうくんの水芸に挑(いど)んだのは君が初めてだよ。
勝てるわけないってば・・・
それでも果敢(かかん)に挑戦するRONくんて偉大。

大騒ぎのお風呂場の隣で、うつむいて淡々と着替えをするバボー。
「こうくんばっかり褒められて、つまんないよね。」
そう話しかけると、バボーはボロっと涙をこぼした。
たかがお風呂に入る前に服を脱ごうとしただけで
家族中が大喜びして褒めちぎる、そんな弟を持ったバボー。
ホント、理不尽だよね。
「こうくんはいっぱい褒めてあげないと分からない子だからね」
そう言うと、バボーはウンウンと自分に言い聞かせるようにうなづいた。

し〜にゃんが戻ってきてこそっと言った。
「RONに『お母さん、頼むよ〜。大騒ぎしすぎだよ。バボーちゃんの事も考えてよ』って怒られちゃった」
RONくん・・・ますます偉大な小学6年生である。

実は
私はバボーの事を可愛そうだとか不憫だとか思ったことは一度もない。
もちろん、理不尽な事が多いとは思う。
こうくんという弟がいるために、不便なことやメンドクサイ事もいっぱいある。
でも、そこから学ぶことも多い。
おそらくバボーは
例えば、「弟だったのにある日突然妹になっていてビックリした」とか
「ものすごく出来のいい兄貴がいて、日々比べられてイヤだ」
といった、平均的ではない兄弟姉妹を持った人をも理解できる優しい大人になるんじゃないだろうか?
それって、ものすごい財産だと思う。

夏休み前にバボーが書いた「詩」を聞いて
ああ、このままの気持ちで大きくなって欲しいなぁと思った。

****************

わたしのおとうと
                  バボー

わたしのおとうとはこうくん
こうくんはあたまがわるい
いつも紙ねん土
いつもわたしのじゃまをする
どうしてあたまがわるいのかな?

でも、ちょっとすき

*****************

バボーの少ないボキャブラリーの中での
精一杯の表現だと思った。

バボー
お母さんは、心からあなたのことを愛しているよ。


<悲しみのこうまま>
夏休みも終盤に入ったとある月曜日。
用事があって、こうくんをショートステイに預けていた。
迎えに行くと、専属の看護婦さんがやってきて、なにやらビニールの包みを手渡しながら言った。
「こうくん、今日、歯が抜けちゃいまして・・・・これがその抜けた歯です。」

「きゃぁぁぁ〜!!ホントですか?
ありがとうございますぅ。
犬みたいに飲み込んじゃったらどうしようって思ってました〜」

もう、おおはしゃぎのワタクシ。

実は、私はこうくんの乳歯が抜けるのを心待ちにしていた。
歯が抜け替わる時期に子供は驚くほど成長する、と何人もの先輩ママに聞いていたからだ。
事実、バボーも、歯が抜け替わり始めた去年ごろから急成長した。
自閉ちゃんだって、きっとそれなりに成長するんじゃないかと
密かに楽しみにしていたのだ。

有頂天の私を前に困惑気味の看護婦さん。
あれ・・・??
看護婦さんが渡してくれた「こうくんの初めて抜けた乳歯」は何か変。

にょっきりとりっぱな「根っこ」がついている。
どうして???

普通、抜けた乳歯に根っこはない。
永久歯が成長するにつれて、乳歯の歯根が溶けていき
抜ける頃にはすっかり歯根はなくなっているハズだ。
初めて我が子の乳歯が抜けた時、乳歯の裏側の陥没した穴を見て
「きゃぁ、根っこがまだ歯茎に残っている!!」
そう勘違いして、歯医者に駆け込む若葉ママもいるくらいだ。

申し訳なさそうに看護婦さんが言った。
「あの・・自然に抜けたんじゃなくて、固いモノを噛んで、折れたんです」

ががががが〜〜〜ん

目の前のりっぱな歯根を見つめながら
ああ、こうくんの永久歯は、いまだ、全く、これっぽっちも準備されていないのね。
こうくんの「驚くほどの成長」はまだまだまだまだ先なのね(T.T)
ショックを隠せない母。

「折れたと言うことは、永久歯が生えてくるまでには、まだ、かなり時間がかかると言うことになりますよね?
そうなると、歯並びが・・・・」
そう言いかけた私に、看護婦さんは待ってましたとばかりに、たたみかけた。
「そうなんです。その事ををお母さんにお話ししたかったんです」。

今後の口腔衛生の重要性など、とても大切なお話を聞きながら
私は全然別の事を考えていた。

歯並び、歯並び、歯並び、歯並び・・・・
私は、30代半ばにして、歯列矯正に踏み切った経歴を持つ女だ。
歯並びの悪さが与える悪印象をイヤと言うほど味わってきた。

私のカワイイこうくんの歯並びが、歯並びが、歯並びが・・・(以下、悲しみで言葉にならず)

麻酔一発、手術で歯列矯正してくれる歯科医を探さねばなるまい。
美容外科の範疇(はんちゅう)になるのだろうか?

大バカと言われてもイイ。
私は こうくんの歯並びのためなら、何でもするわ!!!

ぎゃぁぎゃぁ大騒ぎしている母に、こう父がぼそっと言った。
「まぁ、矯正はあなたの気の済むようにすればいいけどね、
その前に、こうくんの永久歯が存在するのかどうか、レントゲンで確認してもらったら?」

うげげげげ・・・・・そうだった。
ごくまれに、永久歯が元々ない人がいる。
極小未熟児で産まれたこうくんには、その可能性が充分あるのだ。

まずは、歯医者だ。
レントゲンだ。

お〜い、こうくんの永久歯やぁ〜〜〜い
どこにいるんだ〜〜〜〜
はやく出てきておくれ〜〜〜〜(悲痛な叫び)


<追記>
「根っこのついた乳歯」を是非、みなさんにお見せしようと思ったのですが
あまりに小さくて、デジカメでは撮影不能でした。
ものすごくりっぱで丈夫そうな「根っこ」なのよ〜〜〜((T.T))


<まにあなセンス>
思いがけない所で、センスのいい人に会って、嬉しくなる時がある。
センスのない人が多い日本においては、大変貴重だと思う。

毎週金曜日に、我が家の近所に手作りパン屋さんがやってくる。
そこのメロンパンとカレーパンがおいしいので、出くわせば大抵買う。

こうくんは、いつもなら帰宅後に外遊びするのだけど、
その日は母がとっても疲れていたので、家の中で好き勝手にさせていた。
ソファーに寝ころんでウトウトしていると、外から誰かが呼んでいる。
「ボク、おかあさん、いないの〜?」

げげっっ、こうくんが何か???

飛び起きて窓を見ると
こうくんは、窓を全開して、内側の格子から両足を外に出して
気持ちよさげに格子にかぶりついてガジガジやっていた。

あ〜、良かった、鍵かけ忘れたわけじゃなかったんだ。

胸をなで下ろして、窓に近づくと、パン屋さんだった。

パンを買いながら2階を見上げると、こうくんが格子にぶら下がって叫んでいる。
「元気ね〜、あら、でも、学校は?」
「○○小学校じゃなくて○○養護学校に行ってるので、帰りが早いんですよ」
「へ〜、もっと長く見てくれたらいいのに、ケチねぇ。」

おおおっっ、何ていいセンスをしているんだ!!!
今日はツナマヨパンも買っちゃうわっっ

「こうくんやれるモンならやってみろ2LDK」の格子や
見とれるくらいかわいいこうくんの顔を自慢しながら(←大バカ・・・)
こんな風にごく自然に、殆ど知らない人と、こうくんのことについて
笑いながら話ができるのっていいなぁと思う。

私は、こうくんが健常児でないことをしれっとして言う。(らしい・・・byばぁちゃん談)
というか、めんどくさいので、そのまんま言ってしまうのだけれど
言った瞬間に、その人のセンスがばっちり分かる。
わざと試しているわけではないのだけれど、
相手の反応を楽しんでいるフシがある事は否めないので、
やっぱ、意地悪かもしれない。

「ごめんなさい」と謝られると、ちょっと困る。
こうくんが「自閉症」なのは別に悪い事じゃないのだけど、
フツーの人から見たら悪いことなんだろうなぁ。

「可愛そうね・・・」とも良く言われる。
自分のしたいようにして、泣きたいとき泣いて、怒りたいときに叫んで
好き勝手しているこうくんが、何で「可愛そう」なんだ???
マジでそう思う。
ヤツほど幸せな人間はいないぞ(力説)

てな事を、健常児にしか関わったことがない人に言うと
「負け惜しみ」とか「やせ我慢」とか思われるので、あんまり言わないけども
でもね・・・

これは心から本当に正直に言うけども
こうくんはすごく幸せな子どもだと思う。
まっすぐで、シンプルで、わかりやすくって、すごく可愛い。

スペシャルニードのある子どもが、決して「気の毒な可愛そうな子ども」じゃないって分かった瞬間
あなたは「センスのいい人」になれます。

あなたも、まにあなセンス、磨きませんか?(爆)


<そういう風に生まれてきた>
バボーの逆襲に遭った。
子供というモノは知らないうちに成長しているのだとつくづく感じた。

バボーは左手の人差し指の先をむくクセがある。
何でそんなことするのか全然分からなかったのだけど
まぁ、クセなんだから仕方ないと思ってあまり気にしないようにしていた。

先日、バボーがその人差し指にバンドエイドを貼ろうとしていたので
見てみたら・・・
皮をむきすぎて血が出ていた。
ものすごく痛々しくて、悲しくなってしまって
思わず
「何でこんな事するの???」
すっごく感情的に怒ってしまった。

普段、私は感情的に怒るって事はあんまりない。
スペシャルなこうくんを育てているので感覚が麻痺しているのかもしれないけれど
かな〜り、寛容な方だと思う。
なので、必然的にバボーは怒られる事に慣れていない。
突然の母の言動にビックリして固まった後
泣きそうになりながらも精一杯きっぱりとのたまった。

「バボーはそういう風に生まれてきたの!!!」

頭から冷水を浴びせられたようなショックを受けた。
これまで、こうくんがおしゃべり出来ないことや、
他の子とちょっと(かなり)違う行動をすることに対して
「神様がそういう風にお作りになったんだよ」とか
「もともとそういう風に決まっていた事なんだよ」とか言ってきた。
でも、内心「分かってないよな〜。絶対納得してないよな〜」と思っていた。
なので、バボーの「そう言う風に生まれてきた」発言にうろたえ、
諸々の 言い訳に「そう言う風に・・・」を使われたらどう対処すればいいのかと
結構悩んだのだけど
それっきり、バボーは「そういう風に・・・」は言わない。

バボーは分かっていたんだ。
こうくんの障害が、どうにもならないモノであることを。

バボーは指の皮をむくのは良くないって十分分かっている。
分かっているけど、どうしても我慢できなかったんだ。

夜、バボーはめくった指の皮を唇にすりすりしながらウトウトしていた。
そうか、眠る時の儀式に必要なアイテムだったのか・・・
こうくんが眠る体制に入っていなくて、こう父の帰りが遅い時、
バボーは12畳もある広い寝室で一人で寝なければならない。
そんな時、人差し指の皮が必要だったんだね・・・

バボーの精一杯の抵抗。
何だかとってもフクザツな母なのだった。

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